事業承継
2018/09/11

事業承継に必要な企業価値の評価方法――経営者なら知っておきたい

(画像=PIXTA)
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事業承継でM&Aを活用する場合、自社の株式または事業の価値(株式価値と事業価値を合わせて「企業価値」といいます。)の算定が必要になります。ここでは、M&Aと企業価値の関係のほか、企業価値の算定方法であるディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)および時価純資産に営業権を加味した方法について考察します。

M&Aと企業価値の関係

一般にM&Aでは、売り手側は企業をできるだけ高く売りたいと考えますし、逆に買い手側は投資額を抑えるために極力安く買いたいと考えます。そして最終的な譲渡価格は、売り手と買い手の交渉を経て、両社間の合意によって決まります。すなわち、最終的な譲渡価格を決定するための決まった計算式はないと言えます。

とはいえ、譲渡価格を最終的に決定するために、参考となる数字は必要です。その数字が「企業価値」となります。

企業価値を評価するにはいくつかの方法があり、この計算式を使わなければならないという絶対的なルールはありませんが、実際に事業承継の際に使われる主な評価方法はいくつかに絞られています。その代表的な評価方法がDCF法と「時価純資産」に「営業権」を加味した算出方法となります。

DCF法による企業価値の算出方法

DCF法は「割引キャッシュ・フロー法」とも呼ばれ、評価対象企業の生み出すキャッシュ・フローを基準として企業価値を評価する方法であると言えます。企業価値を算出するためには、事業価値と事業外資産の価値を別々に計算する必要があります。

事業価値の算定に必要な要素は主に「見積もりフリー・キャッシュ・フロー(FCF)」と「割引率」の2つがあり、FCFを割引率で割り引いて価値を計算します。

FCFは対象となる企業の中長期の事業計画に基づいて算出していくことになります。具体的には事業計画の想定営業利益額を起点に、減価償却費や設備投資、運転資本の増減見込みなどを加味して一定の調整を加えて計算します。

ただし、FCFの算出に必要となる詳細な事業計画を策定していない企業の場合は、DCF法による企業価値の評価は難しいという見方もあります。

割引率は簡単に言えば、FCFに対するリスクを反映させて決められていきます。DCF法においては、割引率として有利子負債コストと株主資本コストを反映させた「加重平均資本コスト(WACC)」を採用することが一般的となっています。

このような過程を経て算出された事業価値に、有価証券や遊休不動産などの事業外資産の価値を加えて企業価値を算出します。

「時価純資産」と「営業権」を加味した算出方法

もう一つの代表的な評価方法が、「時価純資産」に「営業権」を加味した金額を株式価値とする方法です。具体的には、賃借対照表上の資産・負債を簿価から時価に修正して時価純資産額を算出し、それに実質営業利益に評価倍率(営業権の持続年数)を乗じた額を営業権として加算した金額を株式価値とします。これを数式に表すと以下のようになります。

時価純資産額+営業権= 株式価値
※営業権 = 実質営業利益 × 評価倍率(営業権の持続年数)

実質営業利益とは、多額の役員報酬や私的経費、節税のための保険加入など、事業に直接関係しない費用を除いた実質的な営業利益を指します。評価倍率とは優良企業ほど高い倍率をつけることができ、最近では1~3倍程度(参考:東京都事業引継ぎ支援センター)と言われています。会社の業績が赤字であったり、事業領域の市場が縮小傾向にあったりする場合などは低くなり、場合によってはマイナスになることもあります。

M&Aで必ず必要になる企業価値の評価

M&Aを検討するとき、企業価値の評価は必須のステップの一つです。今はM&Aを考えていなくても、いつかくる事業承継のタイミングではM&Aも選択肢として入れる必要が生じているかもしれません。企業価値の評価方法については、経営者であれば理解しておきたい知識であると言えるでしょう。

 

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