事業承継
2018/09/10

中小企業経営承継円滑化法のポイント 円滑な事業承継のために是非理解しておきたい2つの制度

(画像=PIXTA)
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事業承継では、事業を親族内に承継するケースと親族外に承継するケースがありますが、中小企業庁によると20年以上前は子供などに事業を引き継ぐ親族内承継などが9割を占めていましたが、最近では親族外承継が4割前後にまで増えています。

その理由の一つが、子供に引き継ぐ意思がないことや子供がいないことなどです。実際にこうした理由から、現在も事業を続けている高齢の経営者の約半数が、将来廃業を予定しているとの調査結果もあります。

中小企業の廃業は、地域経済の衰退や雇用の喪失、失業率の増加にもつながります。こうした状況に対応すべく、事業承継の促進を図るために定められた法律が「中小企業経営承継円滑化法」です。

この法律では、それまで親族内承継に限定されていた「遺留分特例制度」を親族外承継にも拡大することや、非上場株式などに関する相続税と贈与税の納税を猶予する「納税猶予制度」について盛り込まれています。詳しい内容を説明します。

親族外にも拡大された遺留分特例制度とは?

親族外承継にも適用が拡大された遺留分特例制度について説明します。遺留分とは簡単に言えば、被相続人が死去し、相続が発生した際、相続人(遺族)について法律で定められる最低限の相続財産の取り分のことをいいます。

この遺留分について、中小企業経営承継円滑化法では遺留分の特例制度を定めています。民法の特例として当該制度が制定された背景には、後継者が安定した会社経営を実現するために、相続人に会社の株式が分散させることを防ぎ、後継者へ会社の株式を集中させることが必要となるからです。

後継者以外の遺族にも遺留分は存在するので、後継者に株式を集中させるためには、ほかの遺族が遺留分の放棄をしなければなりません。しかし、遺留分の放棄については各権利者がそれぞれ家庭裁判所で許可を得る必要がありましたので、手続きが多くなり結果的に時間が多くかかっていました。

そこで時間の短縮や手続きの簡略化のために、後継者が遺留分の権利者と事前に合意して主務省庁(経済産業大臣)の確認を受ければ、家庭裁判所での手続きを後継者が行うことができるようにしました。この仕組みが遺留分特例制度になります。

今般の中小企業経営承継円滑化法では、この遺留分特例制度を親族外にも拡大し、より円滑な親族外承継が行われるようになりました。親族外承継のハードルを少し下げたともいえるでしょう。。

贈与税と相続税の納税猶予制度とは?

中小企業経営承継円滑化法では、後継者が非上場会社の株式などを経営者から受け継いだとき、相続税と贈与税の納税が一定条件の下で猶予されるという制度があります。

平成30年度の税制改正ではより一層事業承継がスムーズに進むよう、2018年1月1日~2027年12月31日までの10年間の措置として、納税猶予の対象を従来の総株式の最大3分の2までから全株式を対象とし、納税猶予の割合も贈与税・相続税ともに100%にしました。

猶予は申告期限から5年間の事業継続が条件となるほか、5年経過後には対象となった株式を継続保有することが求められます。後継者が亡くなった場合などには、猶予認定を受けた相続税・贈与税ともに免除されることになります。

この制度を適用させるためには、都道府県知事の認定を受けることのほか、税務署への申告手続きが必要となります。

全体の流れとしては順番に「特例承継計画の策定」「確認申請」「贈与・相続」「認定申請」「年次報告書・継続届出書の提出(年1回)」と進んでいき、承継から5年経過後には「実績報告」を行い、6年目以降は3年に1回の割合で「継続届出書」を提出していきます。

事業承継を検討する際、理解しておいて損はない法律

この記事では中小企業経営承継円滑化法のポイントとして、親族外にも拡大された遺留分特例制度と贈与税と相続税の納税猶予措置について説明してきました。このほか、親族外承継や個人事業主の事業承継に対する金融支援も特徴の一つです。

昨今の承継の実情も踏まえて制定された中小企業経営承継円滑化法。中小企業の経営者が事業承継を検討するとき、ぜひ理解しておいて頂きたい法律の一つと言えるでしょう。

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