事業承継
2018/05/31

手続きはこうなる!「事業譲渡」を活用した事業承継とは

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)
事業承継にはそのまま株式を譲渡したり、相続させたりする以外にも事業譲渡で会社を身軽にしてから後継者に引き継ぐという手法が考えられます。例えば後継者の方が会社全体の事業理解できておらず、一部事業について引き継ぐことが困難だと判断される場合や、多角経営を行っているが収益が安定している不動産管理部門だけ親族に残してあげたい、等のケースなど、事業譲渡は会社の一部の事業だけを切り離して譲渡できる便利な制度です。

ただし、事業譲渡には個別の資産や負債の引き継ぎが伴うため手続きが煩雑になる面もあります。以下では事業譲渡の特徴と実際に事業譲渡を活用する際にはどのような手続が必要となるのかについて解説したいと思います。

事業譲渡とはどのような手法か

●事業譲渡は事業をまとめて譲渡するもの

事業譲渡は契約に基づいて特定の事業だけ譲渡することを意味します。ある会社が飲食事業とクリーニング事業を営んでいる場合に、そのうちのクリーニング事業だけを切り離して譲渡するケースなどが該当します。クリーニング店舗の設備や備品だけでなく、契約類(賃貸借契約、業務委託契約等)スタッフ、クリーニング店のブランドや信用、運営ノウハウなど事業に関連するものすべて譲渡の対象となります。

●株式譲渡との違いは?

事業譲渡に似ている言葉として「株式譲渡」があります。株式譲渡は会社に対する支配権を持つ株式を譲渡する手法です。そのため、株式譲渡は会社そのものが譲渡の対象になります。事業譲渡の対価は会社その事業を売却するので会社が受け取ることになりますが、株式譲渡の対価は株主が直接受け取るという違いもあります。この場合分離課税が適応されるため、税務的なメリットが生まれます。

●会社分割との違いは?

会社の一部の事業を切り離す手法としては「会社分割」という制度もあります。会社分割は全部もしくは一部の事業を新しく設立した会社に移す組織再編の手法です。事業を移転するという点では事業譲渡と似ていますが、会社オーナーは新たに発行された株式を直接あるいは間接的に保有することになるため、譲渡した事業に対して関与し続ける点が異なります。メリットとしては事業譲渡と異なり、契約類の移管が比較的に行いやすい点等が挙げられます。

事業譲渡の手続きの流れ

事業譲渡は、まず対象事業にとって重要な取引先等との契約書、許認可などが移転できるかどうかを確認する事からはじまります。その後対象事業の切り出す資産や損益の状況を分析し、事業価値を算出していきます。その後の手続きのポイントは「株主総会決議を得ること」と「相手方と事業譲渡契約を締結すること」の2点です。ただし、第三者との間で規模の大きな事業譲渡を行う場合には少しステップが増えます。

たとえば、取締役会を設置している会社では最初に重要事項について決議を行い、相手方と事業譲渡の基本事項についての覚書や秘密保持契約を締結します。

その後、必要に応じてデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスというのは価値やリスクなどの調査を意味しますが、財務、税務、法務、ビジネス、環境、ITなどの事業の特徴によってさまざまな調査があります。

このようなデューデリジェンスの結果を踏まえて条件交渉を行い、最終的な事業譲渡の条件を決定します。条件が決定されると、事業譲渡について株主総会の決議を経て、事業譲渡契約を締結します。

なお、事業の全部あるいは重要な一部を譲渡する際には株主総会の特別決議を得る必要があります。特別決議というのは、普通決議より要件の厳しい決議を指します。また、株主総会決議を条件に効力が発生する事業譲渡契約を先に締結してから株主総会を招集するケースもあります。

手続に手間がかかる場合もある

株式譲渡では株式が譲渡されると会社の経営権が移転しますが、事業譲渡の場合には個々の資産や負債について引き継ぐための手続が必要となります。

たとえば、不動産を保有している場合には移転登記をする必要があります。また、従業員との雇用契約がある場合には個別に同意を得て雇用関係を引き継がなければなりません。

その他の契約についても基本的には契約上の地位の譲渡が生じるほか、債務がある場合には債権者の承諾のもと債務引受の手続が必要となります。

事業承継の前準備としての活用

以上のように、事業譲渡には手間がかかる面もあります。しかし、特定の事業だけを後継者に相続させたい場合や不採算事業があって会社の事業全てを売却しにくい場合には、あらかじめ事業譲渡を実施して相手方と譲渡の条件を整えるという活用方法が可能です。将来の事業承継の前準備として、ひと手間かけてみるのも良いのではないでしょうか。

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