事業承継
2018/05/31

中小企業の事業承継対策として経営承継円滑化法をフル活用する方法

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)
中小企業の円滑な事業承継を後押しするために、国は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」を定めています。これから事業承継を迎える中小企業の経営者の方々は、経営承継円滑化法を自社で使うことができないか、まずは検討してみてはいかがでしょうか。

ここでは、経営承継円滑化法が定めている3つの制度の概略を解説します。

経営承継円滑化法による3つの支援策

経営承継円滑化法には、次の3つの支援策があります。

遺留分関する民法の特例
現経営者が後継者に自社株を贈与で譲り渡すときに、自社株を遺留分減殺請求の対象から除外する制度

金融支援
事業承継に伴って生じる資金ニーズに応える貸付制度や信用保証枠拡大などの措置

税制措置(事業承継税制)
現経営者が後継者に自社株を相続または贈与で譲り渡すときに、一定の要件を満たすと事業承継時の税負担を軽減させる制度

中小企業は上記のような支援を受けることができます。

遺留分に関する民法特例

「遺留分」とは、相続人が最低限受け取ることができる民法上の遺産の割合をさします。本来、被相続人は遺言で財産をどのように処分しても自由です。ただ民法は、遺族の生活の安定や相続人間の平等を確保のために「遺留分」を認めています。これは、兄弟姉妹とその子を除く相続人に、最低限の相続の権利を保障するものです。

現経営者に自社株以外の財産がほとんどない場合、相続時に後継者以外に遺留分の権利を持つ人に遺産が行き渡らない場合が考えられます。そのとき後継者は、遺留分権利者から遺留分を取り戻すための請求(遺留分減殺請求)を受ける可能性があります。

経営承継円滑化法では、現経営者が後継者に自社株を贈与するときに想定される課題を解決しようと「遺留分に関する民法特例」を規定しています。この特例を活用すると、現経営者から後継者に贈与等された自社株について、推定相続人全員の合意があれば、遺留分算定基礎財産から除外する(除外合意)、遺留分算定基礎財産に算入する価額を合意時の価額に固定する(固定合意)のいずれか、もしくは両方を適用させ、自社株を後継者に集中させることができます。

金融支援

事業承継する際には次のような資金ニーズが生じます。たとえば、相続等で分散した自社株や、事業用資産の買取資金、自社株にかかる相続税、贈与税の納税資金、銀行の借入条件引き下げや取引先の値下げ要求対策のための資金などです。

事業承継に伴って生じるこのような資金ニーズに応えるために、経営承継円滑化法に基づく認定を受ければ、低利子貸付制度、信用保証枠拡大の措置を活用することができます。

低利子貸付制度とは、事業承継の際に、必要とする資金の融資を代表者個人が金融機関から低利子で受けることができる制度です。

信用保証枠の拡大措置とは、経営承継円滑化法に基づき認定を受けた会社や個人事業主が事業承継に関連して資金を金融機関から借りる場合に、信用保証協会は保証枠を拡大して対応します。

非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)

現経営者が後継者に自社株を相続、もしくは贈与して承継する場合には、自社株の相続税評価額に対する相続税・贈与税が後継者に課されます。重い税負担により事業承継を阻害することがないよう、国は一定の要件を満たせば事業承継時の税負担を猶予、もしくは免除する税制措置(事業承継税制)を用意しています。

平成30年税制改正では、10年間の特例措置を設け、従来の事業承継税制から大幅に要件を緩和しました。新たな事業承継税制の適用を受けると、10年以内に計画的に相続・贈与すれば、後継者は実質的に税負担することなく、自社株を承継できるようになります。これから事業承継時期を迎える中小企業が事業承継税制の適用を受ける場合、既存の制度と新制度のどちらかを選ぶことになります。

10年の期間限定の事業承継税制の適用を受けるには、2018年4月1日から5年以内に特例承継計画書を提出することが要件の一つとなっています。適用を受ける可能性がある中小企業経営者は、この計画書を提出しておくといいでしょう。

経営承継円滑化法を活用し、事業承継を

上記のように、事業承継税制にはさまざまな要件があります。経営承継円滑化法の適用を検討する場合には、専門家に相談することをおすすめします。これらの制度をフルに活用して、円滑に事業承継を進めましょう

 

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