事業承継
2018/05/31

平成30年度改正で事業承継税制はどうなったのか?

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)
事業承継はホットな話題となっています。中でも、平成30年度税制改正で新しくなった事業承継税制が注目を浴びています。事業承継税制の定義には明確なものがありませんが、ここでは、事業承継税制を、イコール非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度と定義します。本記事では、注目を浴びる事業承継税制とはどういうものなのか解説していきます。

中小企業における事業承継時の税負担

事業承継で現経営者が後継者に自社株を承継させる場合、主な手段としては、売買、相続、贈与の3つが考えられます。売買の場合は所得税と住民税、相続・贈与の場合は相続税・贈与税がそれぞれ課税されます。親族間での承継の場合、対価を払って株を売買する譲渡の手段はあまり取られず、対価ゼロで株を承継する相続・贈与による場合が多くなりがちです。

相続・贈与による承継の場合は、相続・贈与時点の自社株の評価額に対して相続税・贈与税が課されます。したがって、自社株の評価額が高い場合、相続税・贈与税の支払いも高額となり、自社株の承継が進まないということが問題視されていました。特に、自社株の評価額が高い会社は健全な企業ですから、税負担が健全な企業の事業承継を阻害する要因となることは国としても重要な検討課題とされてきました。

現行の事業承継税制と特例制度の創設

上記の理由から、2009年に事業承継税制が創設(2008年10月1日以降の相続等、2009年4月1日以降の贈与より適用開始)されました。事業承継税制とは、現経営者が後継者に自社株を相続・贈与により承継する場合に、一定の要件を満たすときには、経営承継円滑化法の認定を受けることで事業承継時の税負担を猶予・免除されるという制度です。しかし、2008年10月~平成2016年9月末までの経済産業大臣の認定件数は合計で2,000件(相続 985件、 贈与 627件)に満たず、残念ながら現行の事業承継税制は活用されているとは言えない状況でした。

そこで、平成30年税制改正で事業承継税制の特例制度が新たに措置されることになりました。いわゆる「団塊の世代」の事業承継への対応として、10年限定で事業承継税制の特例措置を設け、大幅に要件が緩和されることになりました。現行制度と特例制度は併存し、特例制度の条文に書かれていない内容については、現行制度を参照するとされているので、適用にあたっては両制度の理解が必要です。

現行制度と特例制度の主な対比表は次の通りです。
  現行制度 特例制度
対象株式 総株式数の最大2/3まで 全株式
納税猶予割合 贈与100%、相続80% 100%
雇用維持要件
(承継後5年間の要件)
5年平均で80%雇用維持が必要
(維持できなければ全額納付)
弾力化(維持できなくても納付不要、都道府県に理由報告等が必要)
株を渡す側
(現経営者他)
複数株主 複数株主
株を受け取る側
(後継者)
1人のみ 最大3人まで
(3人とも代表権を持つ必要あり)
後継者が株式売却や
自主廃業する場合
株価下落時でも承継時の株価で贈与・相続税を納税(過大な税負担が生じうる) 売却時や廃業時の時価で納税額を計算

上表をご覧いただくと分かるとおり、税制改正後は相続時の対象株式が100%、猶予割合も100%となったため、税負担が実質ゼロとなります。

新たな事業承継税制の適用を受けるために

新制度の適用を受けるためには、2018年4月1日から5年以内に都道府県に対して「特例承継計画書」を提出する必要があります。適用を受ける可能性が少しでもあるなら、とりあえず計画書を提出しておくとよいでしょう。

事業承継税制には、その他細かい要件がたくさんあります。また、要件を満たさなくなった場合、猶予された税額の納税が必要となることもあります。さらに、新制度は10年の期間限定の制度なので、どこかのタイミングで現行制度に戻ってしまうということも頭に入れておかなければなりません。事業承継税制の適用を検討するにあたっては、必ず税理士等の専門家に相談されることをおすすめします。

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