事業承継
2018/05/31

平成30年税制改正の事業承継税制を活用するにあたっての3つの問題点とは

(画像=PIXTA)
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平成30年度税制改正で事業承継税制が大幅に変わりました。「これで中小企業の事業承継の全てが解決する」といった論調も見られるますが、それは本当でしょうか。事業承継税制を適用させる際には慎重に検討する必要があります。安易に事業承継税制を適用することがないよう、主な問題点を3つ紹介します。

平成30年税制改正の事業承継税制は期間限定

今回、改正された事業承継税制(以下、「特例事業承継税制」といいます)は、10年間の期間限定の措置です。10年の間に先代経営者から後継者に生前贈与をして、先代の経営者に相続が発生した場合は、特例事業承継税制を適用させれば実質ゼロの贈与税・相続税で株式を承継することが可能です。

しかし、後継者の次の世代への承継については、特例事業承継税制の適用期間は終わっている場合が大半でしょう。そこで新たな措置が講じられなければ、現行の事業承継税制に戻る可能性があります。特例措置が設けられる前の事業承継税制は、納税猶予の対象となる株式は3分の2までで、納税猶予を受けたとしても20%分は相続税を納めなければいけません。特例措置の期間が終わると、実質税負担ゼロの状態は解けてしまうのです。

したがって、後継者がさらに次の世代に事業承継した場合は一定の納税が生じる可能性が高いことを念頭に置いて、本当に今の世代で事業承継税制の適用を受けていいのか検討する必要があります。

事業承継税制の取消リスク

現行の事業承継税制、特例事業承継税制のいずれの場合でも、納税猶予措置の適用が受けられなくなる「取消リスク」は常につきまとうものです。事業承継税制の適用を受けた後に一定の要件を満たせなくなった場合に、猶予された税額の全部または一部を支払う必要があります。このリスクのことを「取消リスク」と表現します。

特に、相続税・贈与税の申告期限後5年間は、後継者による事業継続が必須で、年次報告書を提出して厳しい要件を満たしていく必要があります。また、5年経過後であっても欠損を補填する目的以外の減資が禁じられ、一定の組織再編ができないなど、満たし続けなければならない要件もあります。事業承継税制の要件を満たし続けるためのハードルは高いものです。将来的に組織の機動力が失われる可能性もあるでしょう。

本当にそれらの要件を満たし続けることができるのか、取消リスクがあってもなお、それを補って余りあるメリットが自社にはあるのか、万が一満たせなくなった場合に納税できる資金と心の準備はあるかをよく考えた上で適用を受けましょう。

事業承継税制の手続きの煩雑さ

適用後の要件を満たしているかのチェックを受けるために、申告期限後5年は年に一度、都道府県と税務署に対してそれぞれ書類を提出する必要があります。また、5年経過後は、3年に一度、税務署への書類提出が必要です。現行の事業承継税制があまり使われてこなかった理由は、この手続きの煩雑さにあるとも言われています。新しい事業承継税制でもこの手続きは変わりません。

こういった手続きに手間をかける必要があるか、手間をかけても事業承継税制の適用を受けるメリットがあるのかは一考の余地があります。

事業承継税制の活用は専門家の意見を聞くことが大切

このように、事業承継税制を活用して事業承継することが必ずしもベストとは言い切れないことが分かりました。適用したものの、要件を満たすことができず納税せざるを得なかったという最悪の事態に陥らないよう、適用を受ける際は自社の状況を踏まえながら慎重に検討すべきです。

しかし、要件をクリアできる中小企業にとっては、今回の税制改正は事業承継に関連する悩みを解決する助け舟となってくれるでしょう。非常に複雑な制度ですので、税理士等の専門家に相談して、慎重に検討することをおすすめします。
 
 

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